私の頭の中のHDD

何でもは知らないわ、知ってるのは耳にこびり付いた誰かの言葉だけ

冒険歌手 珍・世界最悪の旅

 

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たぶん、この探検隊はものすごい大変な僻地で大変な目にあっているんだと思う。

 

第二次世界大戦日本兵40人が呑み込まれ死亡したという濁流。
ほんの数十年前まで人食文化が残っていた村。
皮膚の形が変わるほど襲われる蚊や部屋の壁にビッシリと蠢いているアレ。
何も頼ることができない大海原で転覆寸前になる船。

 

もし、文章力がある人ならこのカタルシスをお前らも喰らえと熱気をもった文章で書き上げるだろう。
だって、様々はアクシデントを知恵努力根性でどう乗り切ったのか、それが冒険ドキュメントの醍醐味なのだから。

 

それが全く伝わってこない
だってこの人は芸能界にいる歌手。

 

雑誌の募集広告を見て、自分を変えたい、というボンヤリとした気持ちで申し込んだ程度の覚悟で、隊員になってから急いで船舶免許を取りクライミング技術を『神奈川』で学ぶなど冒険に行く前からおぼつかない足元。

 

いわば僕たちとなんら変わらない、普通の、しかも女性がこの大冒険に挑んだ。
いや、文章の中ではあまり挑んでないっぽい。
日記なのでその日に何が起こったかだけがつづられている。(本には備考として補助の説明文もある)

 

日本兵40人を呑み込んだ濁流は10行も使わずにクリアーした。
太平洋ど真ん中の危機はすぐに星空の美しさの感想にとって変わった。

 

ジャングルクルーズを探検してます、みたいなノリだ。

 

読んでいる自分はどうにか「この冒険は大変なんだ。ジャングルを、絶壁を、ピラニアがいる川を、超えていくのは本当に覚悟がいることなんだ」と補完しながら読み進める。そうしないと脳内カタルシスが溢れてこないから。

 

それを求めてるのに
彼女の文章はジャングルクルーズを突き進む。

 

あまりのあっけなさにKindleをめくる指はスピード上げていくが、それさえ簡単に抜き去り彼女はあっさりと人類未踏の山から伝説の犬探しに目標を変えてしまう。

 

ついて行けない。

 

この人のバイタリティどうなってるんだ?
次は何をどうあっさり乗り越えるんだ?

 

興味はそっちに移ってしまう。
いつの間にか読み終わりたくないという感情がこみ上げてくる。
最初は筆者と同じように「なんとなく」読み始めた本だったが、今まで読んだ冒険小説とは全く似つかない気持ちながら自分も結局は冒険を終えることができた。

 

日記形式なので電車を待ってる時やトイレの中など、少しの隙間があれば簡単にトリップできるのでぜひ読んでほしい。
Kindleだとなおさら「あっさり」いけるのでオススメ。